勇者様と従者さま。
「あ?なんだそれ、誤解」

 魔物が不満そうな声をあげた。

「しらばっくれるでない」

「来たときには荒れてたっての。ここ、人間の負の感情が貯まってて住みやすいんだ」

「ではその悪趣味な姿はなんとする」

「この屋敷にぴったりじゃね?」

「おぬし……おいあるじ!納得するでない!」

 深く頷いていたエヴァがびくっとする。

「こやつ我等を殺そうとしておるのだぞ!」


「はあ…やっぱなあー、会っちまったらなあ」

 エヴァは咄嗟に抜いた聖剣で、何の前触れもなく伸びてきた爪を払う。

「なな何するんですいきなり」

 次々に襲い掛かる魔物の爪。動物の爪に似て、硬く鋭い。

 エヴァは受け流すので精一杯だ。

「あんたに恨みはないが…この世界気に入っててね。ここでのんびりして、ときに人間を喰らう。…まだ、封印されたくはないな!」


「…シュリ!近づけません!」

 …そう。魔物に近づけないのだ。

 前に出ようとするたび、爪に阻まれる。

 つまり、魔物に聖剣を突き立てることができない。

「…その剣は怖いんでね!」

「言ったであろう、小狡いやつと…!」


 必死に攻撃を払い続けることで、体力と精神力が消耗されていく。

 エヴァは早くも息を切らしていた。

 それを見た魔物がにやりと笑う。

「終わりだ!」

 頭を狙って爪が突き出される。

「…!」

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