導光
「あ、泉谷さん、こんにちは」
私に気付いた斎藤さんが
向こうから声をかけてくれた。
私は口実として持ってきた
イベントの申込書を差し出す。
「さすが提出はやいねー。
今日は何の授業やっけ?
泉谷さん木曜日って何か
授業とってたっけ?」
「今日から物理化学!
ねぇ新しい先生ってあの人?」
最後の部分は声を落として
カウンターの向こう側にいる
見慣れない男性に目を向けた。
「あー中岡先生の授業か!
そっか初めましてやもんね。
うん、あの人が中岡先生。」
ふーん。
何て言うか普通。
うん。ほんと普通。
少し拍子抜けした私は
斎藤さんにお礼を言って
みんなの待つD教室へと戻った。