ホワイト・メモリー
「田中主任は、加藤さんの意見が正解だと思っていたのですか?」

田中は、まさに鳩が豆鉄砲を食ったような様子だったが、主任としての面目を保つためになんとか出てきた言葉がこれだった。

「せ、正解はないんだよ、小林くん」

さっきまで“さん”付けだったのに、突然“くん”付けになってしまっているあたり、相当テンパっていたらしい。
どのくらい沈黙が続いたであろうか。功は「正解はないんですか。そうですか」と皮肉を言って椅子に座った。
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