ヒトノモノ
啓介とあたしは無言で家に入る。
啓介は普段どおりにジャケットを脱いでソファーにかける。
ネクタイをシュッシュっと緩めて、あたしを見つめた。
あたしは、そのいつもの一連の動作をただ眺めるだけだった。
「・・・で。どうしたいの・・・優子は。」
あたしは・・・
啓介と別れる・・・?
別れなきゃ・・・もっとお互いが辛くなる・・・
答えに渋っていると、啓介があたしの腕を掴んでベッドルームに連れ込んだ。
ベッドに放り投げられるようにしてあたしを倒す。
あたしの目の前の啓介はあたしの瞳を見据えた。
「・・・んっ・・・」
いきなり激しく唇を重ねる・・・
息をする間もなく、啓介はあたしの唇に食いついてきた。
唇が離れた一瞬に啓介はポツリという。
「こういうことを優子にできるのは俺だけだよね?」
啓介の力強く妖艶な瞳にあたしは、身動きが取れなくなった。
あたしは、ダメだと思いながらも啓介を欲している。
啓介の心も身体も・・・欲しい・・・
全部・・・全部・・・
あたしだけのものに・・・