差別
「まず出席を取ります。呼ばれたら大きく返事をしてください。」
 またあの時と同じように、児童の名前を呼び出席を足りだして、一通り名前を呼び終えて欠席者がいないと知ると、別の話題に切り替えようとしました。
「今日は、欠席者はいないようですね、では先生からお話しをします。」

「先生!徐 美姫はいません、あの子の事は聞かないんですか?」
「徐さんは、あの日から来ていません。なぜ来なくなったんですか?」
 熊坂先生の話をさえぎるように、坂口くんと栗田くんが突然言い出した。すると熊坂先生は、今までニコニコしていた顔が突然消えて、困ったような表情になってしまった。
「先生!もう僕たちは大丈夫です、小野先生のもとでシッカリ勉強しています。」
 田中くんが、最後にそう言うと熊坂先生は、また教室の皆を見渡してゆっくりと話し出した。
「そうですか、もう皆はそんなに成長したんですね?」
「あなたのそう思いますか?」
そういって、教壇を降りて皆の顔を確かめるように見て廻り、後ろの席にいた平岡さんに最後に言うと、彼女は黙ってうなずきました。そして熊坂先生は教壇に戻ると、皆に一礼して最後の挨拶をすると静かに教室を出て行った。
 熊坂先生は、それを最後にもう学校に来る事は無かった。それに「徐 美姫」の事を話す者もいなくなって、悠太も次第にその事は忘れてしまった。
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