magnet


音がしたはずなのに扉が開く兆しが見えない。


確かに開く音がしたよねと、恐る恐るドアに手を掛け手前に引くと……開いた。


扉を開け放ち見えるのは綺麗な玄関。この家の趣味なのだろうか、星空の絵が飾ってある。


「ゲホッゲホッ!」


「え?わ……何やってんの!?」


さすがに私も焦った。目線の先に誰もいなかったのに目線の下には朔が屈みこんでいたから。


同じように屈みこみ、触れた肌と肌から伝わる熱さ。相当熱があるようだ。


「立てる?肩、貸すから」


コクリと言うより、カクッと言う表現の方が正しい頷きを見せると少しずつゆっくり歩き始めた。


歩くだけでも辛いのかゼーハーと息をしている。


上着、何が何でも借りなければ良かった。と後悔した。





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