magnet


何とか朔を二階にある一室の朔の部屋に運ぶも辛そうにベッドに身を沈める。


「無理して出なくてもいいのに」


「……愛架先輩、がメール、くれたから……」


重い息混じりにそう言う。だから、無理して出た?辛いのに?なら、


「来るんじゃなかった」


言ってからしまったと口を閉じるが、遅い。


「…俺は……会いたかった、から嬉しいです」


「……」


風邪で弱った人間はやけに素直になってしまうのだろうか。


来るんじゃなかったなんて冷たい感じともとれる言葉に返すのがそれなのだから重症だ。


不覚にも私だって嬉しいと思う感情が芽生えたから更に重症だった。


「濡れタオル、持ってくる」



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