magnet
相手も気付いたようで、パチッと目があった。
そのまま足を進めれば距離が縮まるわけで。
「雑用ですか?お似合いですね」
憎まれ口を叩かれるわけで。
正直重さのせいで気が立ってる。
「ありがとう。そう言う湊くんもお似合いかもしれないけど」
「そうですか?なら、一緒に雑用します」
ヘラッと笑って半分以上の教材を抜き取る。
ありがたいけれど私は意外な行動に唖然としていた。まさか湊くんが優しいとは。
「意外な一面もあったんだね」
「先輩知ってますか?人に良いことをすると自分にも良いことが返ってくるって」
「つまり見返りを求めるのか」
「やだなー。そんな事は言ってないですよ。被害妄想ですね」
いちいち勘に触る奴だ。イラッとしながらも、一瞬堪える事にする。
「……何であれ。ありがとう。そして私の被害妄想は湊くんの自意識過剰には到底及ばないよ」
「どうもありがとうございます。でも、先輩の可愛げのなさには負けます」
「……」
「……」
こうして今回も口論が勃発するのだった。