magnet


資料室に着いて教材を戻す。ここは埃っぽくて仕方ない。


なのでここに長い間いるのは好ましくないと、軽く制服を払って出ようとした。


「先輩、ちょっとだけ触れてもいいですか?」


「は?」


何を……と思って思わず息を呑んだ。


私の目に映る湊くんはいつもと違う。


雰囲気。挑発的な目。静かな口調。何もかも。


無意識の内に後退りをしてしまう。


それを湊くんは見逃さなかった。


「逃げないでください。すぐ終わりますから」


ジリジリと間合いを詰めて、近づいて、それから距離を置くように私も更に後退を繰り返す。


資料室は広くない。


故に、大量に資料が並べられた棚に背中をぶつけた。







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