magnet


気持ちと体が一致しなくて気持ち悪かった。


一言言うだけでスッと軽くなる。言葉はとても不思議だ。


「そうやって言えばいいよ」


微かに笑みを浮かべる仁。


もう一つ。


「こんな風に言うの、得意じゃない」


また一つ。


「面と向かうのが怖い」


またもう一つ。


「大切だと思えば思うほど嫌われるのが怖くなる……」


これほどまで臆病で、一度だけ面と向かったあの時の気持ちを思い出そうとしても思い出せなかった。


奇跡に近かったのか。嫌いだと思い込んでいたからか。相原心菜はこうだと勝手に作り上げていたからか。自分では答えが出ない。


それでも答えるならば、もう上手く自分を形成する事は出来ないと答えるだろう。


きっと、この事に関して本気で何もかも『どうでもいい』なんて言えない、思えない。



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