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足を立て、膝に顔を埋めているから表情は見えない。その真意は分からない。
けど確かにトクンと胸が脈打った。
返事に困っていると何を思ったか急に勢いよく立ち上がる湊。
目を丸くさせていると、パーカーを手にとり扉の前に立った。
「先輩、逃げる準備はいいですか?」
問いかける奴は右足を後ろに下げている。
「え?何……っ!ちょっ馬鹿!止め……」
耳を塞ぎたくなるような音が聞こえたと思ったら扉一枚消滅している。
それを見た瞬間、私は走り出した。
「なんて事するの!」
「だって、あのままだとカラカラに干からびそうでしたから。死にたくないです」
さっきの言葉は嘘か!そう叫びたかったけれど気恥ずかしいので止めておいた。
「何かあったら湊の責任だから」
その代わりにそう叫んでおいた。