magnet
朔は次第に目を伏せ、それでも尚手を私の方に伸ばした。
「っ……」
ビクッと反射的に体が揺れる。暖かい手が右頬を包んだ。
どうしてだか泣きそうになってしまって、温もりから逃れようと朔の手を緩く掴んだ。
手を落とすように退かす。だけど、力なく落下しても勢いで絡まるように手と手が重なる。
反抗する力もなく顔を上げる気力もなく、その手を見ていた。
「……先輩が俺を嫌いなら仕方ないって思ってた。情けないけど追い掛けて嫌われるくらいなら追い掛けないでおこうって思ってた」
キュッとキツく強く繋ぎ直される。
「けど、そう言うなら……それなら言ってもいいですよね?」
思わずそれと動揺に目を閉じてしまった。
「――俺は先輩が好きです。誰よりも」
――ガシャッ!
と音を立てて氷が落ちた音がした。