magnet
すがるような手にすがりつきたくなった。
「さ……坂上さんが好きなんじゃないの?」
なのにそうしないのは私の強がり。強がりは私。
「……先輩といるとき片隅でそう思ってたのは事実です。それでも昔の事だからって区切りをつけた筈だったんです。でも実際目の前にしたら分からなくなって……。なんて、あのピアス捨てれなかったくせに言う台詞じゃないですよね」
「……」
「最初から沢山傷付けてごめんなさい……全部俺のエゴだったんです。好きだって思った時から嫌いになろうとして、それでもやっぱり好きで。好きなのに傷付けて」
きっとそれは悪循環。
悪循環をしているのなら私も同じだ。好きなのに嘘ついてまで距離を置いて、でもどうしても諦めきれてなかった。
馬鹿みたいに不器用。同じように不器用。
下手ながらに言葉は紡いでみよう。と思った時、また相手の口が開かれた。
「あ、…っと……沙織さんにはちゃんと先輩が好きだって言いました。それで、だからこれ……このピアスはもういらない思って。分かって欲しいしそれに……」
“それが俺なりのケジメ”と言う手のひらに青い星のピアス。
それは大切にしていて、大切に想っていた証。ケジメだと言うのだから止めるべきではない。
「――駄目」
なのに私は止めた。