magnet
驚いたように目を見開くのが分かった。
多分、私がそんな事言うと思わなかったのだろう。私だってそうだ。でも……
「……これは私が持ってる。何もいらないとかでどうにかする事ないと思う。上手く言えないけど……坂上さんを好きだった事実を消すのは違うと思う」
手に置かれたピアスを自分のブレザーのポケットに納める。
きっと手元にある事を良しとしないだろうから私が持ってるだけ。
別にピアスを持っている事事態はどうでもいい。
「っそれ、じゃあ、一番に想ってる証明が出来ない」
ただ、これだけでいい。
これだけで良かった。
誤魔化しも曖昧なものもいらなかった。
私は、小さく小さく笑った。
「――私は今でも朔が好き」