magnet


私に対しての言葉は返っては来ず、朔は顔を横に向ける。急に私の言った言葉が行き場を無くした気がした。


「……何なの」


「……先輩が面と向かってそういうこと言うから」


つまりアレか。照れてる、と?口に出すと、違うとか何とか言い出しそうなので黙りこむ。


「……もういいや。先輩がそう言ってくれるなら」


「何それ」


「俺、思ってた以上に先輩の事好きみたいです。ちゃんと先輩を知りたい。なので、思ってる事とか感じてる事、教えてください」


“先輩、基本的に無表情なので分かりにくいです”


なんて。馬鹿にしてる。けど、いいよと頷いたのは、朔の素直さに調子が狂いそうになりながらも、それが心地いいだなんて思ったから。


「また、俺と付き合ってくれますか?」


聞かれた事の答えだってもう決まってる。


「当たり前」


「じゃあ……抱き締めてもいいですか?」


「え、や、それはちょっ……っ!」


唐突な質問を拒否する前に、繋がれた手が引き寄せられてスッポリと腕の中に収まってしまった。




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