magnet


移動教室に着くなり愛架は湊くんの話を持ち掛けてきた。


予想はしていたから驚きはしない。この教室でも席が前後なのでなんとも話がしやすいが為の結果だ。


それよりもむしろ、本当に黒いパーカーだった事に密かに驚いていた。


「いっつもあんな感じなの?」


「いっつもあんな感じ」


素っ気無く答えると、目に見えるくらいムーッとした表情に変わる。


これは、またあのパターンだ。


「そんなだから「あーえーっと。愛架!さっきどうして真剣に湊くんの顔見てたの?」」


だから、怒られる前に話を反らせるように頑張ってみる。


どうでもいいことで怒られるのはごめんだ。


ましてや、興味ない湊くんの事なんてもっとごめんだ。


「だってだって、近くで見ると綺麗すぎるから!」


思いの外、その話に乗ってくれてホッと息をつく。悪いけど後は聞く体勢に入らせてもらおう。


頬杖をつきながら、耳に入ってくる音を言葉として受け取る。




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