あんたとあたし。
「俺らは7月の頭にあった県大会で優勝したから、出れんの。」
「へぇ。初耳。」
「お前が知らないだけ。」と、龍が笑った。
駅まであと信号を一つ越えるだけ。
あたしらはそこで、交差点を曲がる。
最近、龍が教えてくれた小さな喫茶店に毎日行く。
・・・流れ的には、龍も一緒に。
実際、一緒なんだけど。
少し小洒落た店内に流れる洋楽は、本当にその店にあっていて。
初めて龍が連れてきてくれた日から、あたしは毎日通ってる。
・・・てゆーか、あれ、連れてきてくれたじゃないよね。
野球のルールを理解しきれていないあたしに、ルールを叩き込むため、ここに連れてこられた。
龍と佐々木、それにもう一人の副キャプテン、進藤とで、みっちりたたきこまれた。
おかげさまで、多少のことは理解できるようになったけど。
まだ、細かいことまではわからない(泣)
「じゃあ、あたしも行くの?」
「甲子園出るから、マネージャーが必要だった。」
「あたし一人だけ?」
「お前一人だけ。」
からん
店に入ると、いらっしゃいませ、とあたしらと変わらない年のバイトさんが頭を下げる。