あんたとあたし。



「俺らは7月の頭にあった県大会で優勝したから、出れんの。」


「へぇ。初耳。」



 「お前が知らないだけ。」と、龍が笑った。



 駅まであと信号を一つ越えるだけ。


 あたしらはそこで、交差点を曲がる。


 最近、龍が教えてくれた小さな喫茶店に毎日行く。

 ・・・流れ的には、龍も一緒に。


 実際、一緒なんだけど。


 少し小洒落た店内に流れる洋楽は、本当にその店にあっていて。


 初めて龍が連れてきてくれた日から、あたしは毎日通ってる。



 ・・・てゆーか、あれ、連れてきてくれたじゃないよね。



 野球のルールを理解しきれていないあたしに、ルールを叩き込むため、ここに連れてこられた。


 龍と佐々木、それにもう一人の副キャプテン、進藤とで、みっちりたたきこまれた。


 おかげさまで、多少のことは理解できるようになったけど。



 まだ、細かいことまではわからない(泣)



「じゃあ、あたしも行くの?」


「甲子園出るから、マネージャーが必要だった。」


「あたし一人だけ?」


「お前一人だけ。」



 からん


 店に入ると、いらっしゃいませ、とあたしらと変わらない年のバイトさんが頭を下げる。



 
< 106 / 129 >

この作品をシェア

pagetop