月の下でキスと罰を。
「去年の冬に君を見つけてから、あっという間だったな。体調もとりあえず、戻って良かった」

「はい……」

 瀬良は、会話とは裏腹にあまり明るい表情をしない。

 痩せて細かった頬も、少しふっくらして、顔色も良い様子だけれど。それを見て、あたしはほっとしている。

 手に持っていたカップを置くと小田桐は、瀬良の所へ行き、肩に手を置く。

「もう、純粋に人形師として進んで行きなさい。見守っているから」

「……」

 瀬良は、唇を軽く噛んで頷く。小田桐の優しさに身を委ねて、安心しているのであろうということは分かった。


 あたしは、瀬良が笑っていてくれるなら、まわりがどうなろうと知ったことではないと思っている。瀬良さえ幸せでひとりじゃないなら。

 もうこれ以上、瀬良が体をも売り物にしないで済むならば。

 小田桐と一緒に生きればいい。


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