死のスケッチブック
だが今はまだ、誰かが死んだという話は聞こえてきていない。

己の失態を悔やみながら、真名は校舎の奥にある美術室に向かった。

扉を開けると、あの女の子が一人、座っていた。

逆光でよく見えないが、イーゼルにスケッチブックを置いて、絵筆で何か描いている。

次第に眼が慣れてきた。

描かれているのは、夕日の赤に負けないぐらい、赤い色に満ちた絵だった。

「っ!」

ふらつくも魅弦に支えられ、何とか立ち直る。

女の子が描いていたのは、真っ赤な地面に倒れる一人の女子生徒の姿だった。

何が起こったか分からないまま、息を引き取ったような顔をして倒れているのは…。

「伊和未…」

今朝、言い合った伊和未の姿だった。
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