秘密


そんな事あり得ないよね…

佐野君だって別に深い意味で言った訳でもないんだろうし…

そんな事期待しても、私には佑樹が居るし、佐野君にも…

笑顔を心がけようって決めたのに…
気持ちが沈んでしまう。

ダメダメ。
佐野君と居る時にこんな事考えるのやめよう。

いつまで続くかわからない私達の関係だけど…
その時が来るまでは、側に居させて。佐野君。


「…何で無理なの?女の人だってバイクに乗ってる人沢山居るじゃない、私も自分で乗ってみたいな…」

佐野君の言った言葉に対しての返事ではなかったけど、私は思った事を口にした。

「…バイク押せる?倒れたら起こせる?」

「………多分…」

すると佐野君は私の手首を掴んで、

「こんな細い腕じゃ無理」

「……う…」

…何も言い返せない。
確かにバイクは重たそうだし、それを押したり起こしたりは無理かも知れない…

「…乗りたかったら…いつでも乗せてやるから、あ、バス来た」

佐野君は手を離すと立ち上がった。

…佐野君、また勘違いさせるような事言わないで…
バカな私はその言葉に嬉しくなってしまうから…

期待してもどうにもならないのに、もしかして佐野君も…とか思ってしまう。

ダメなのに、そんな事…無理なのに…

「奏?乗らないの?」

ベンチに座りうつ向く私に佐野君は、バスのステップに足をかけ、振り向いた。

「あっ、ごめん」

慌てて立ち上がり、佐野君の後を追って、バスに乗り込んだ。

バスの中は一番後ろの座席以外埋まっていて、佐野君はその空いている座席へと歩いて行き、私を窓際に促し、その横に自分も腰掛けた。

「奏、どこで降りるの?」

「S町だよ?佐野君は?」

「俺、そのひとつ前、ホントに近所だよな?」

「私、今朝はそこからバスに乗ったよ」

「あ、そうか、弁当…でも何でチャイム押さなかったの?」

「…それは、朝早かったし…それに、お弁当なんて…かえって迷惑かなって…思って、黙って置いてきたの…」

「そんな事ある別けない、スゲー嬉しかった、あ、またよろしくとか俺言ったけど、無理しなくていいから」


…明日も作る…佐野君の分も…


その喜ぶ顔が見たいから。


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