秘密
◆◆◆


「ちょと、聞いてる?茜くん!」

「…はいはい。聞いてるよアスカちゃん」

アスカはもろに露出した、今にもこぼれ落ちそうな胸を、カウンターのテーブルの上に乗せて、焼酎の入ったグラスをバンッとテーブルの上に叩き付けた。

その勢いで、豊満な胸がブルンと揺れて、そこにグラスから飛び散った焼酎が跳ね飛んだ。

「やだ〜、跳ねちゃった」

「はい。おしぼり」

カウンターの中から新しいおしぼりをアスカに差し出す。

「拭いてくれる?茜くん?」

「……遠慮しときます」

「ちぇっ、つまんないの〜」

そう言っておしぼりを受け取り、ごしごしと胸を揺らしなが拭いているアスカ。

「アスカちゃん、お店戻んなくていいの?まだ仕事中でしょ?」

「いいの!あのオッサンしつこいから、ママに言って出てきたんだから、オッサン帰ったら連絡来るから」

「…オッサンって…お客様だろ?」

「あのハゲ!おさわりと勘違いしてるのよ!あたし身体をベタベタと…ああっ!気持ち悪っ!うちは普通のクラブだっつーの!」

かなりご立腹のアスカ。

アスカはこの近所のクラブのホステス、いわゆるキヤバ嬢。
どうやらしつこい客から逃げて来たらしい。

「No1が抜け出したらダメだろ?」

「No1だからこんな事出来るんじゃない。いつ辞めてもいいんだからあんな店、もっと高級クラブからの引き抜きの話しとかも沢山あるんだから!ママに泣き付かれて、仕方なく居てやってるの!あたしが居なくなったらあの店客なんか来ないわよ、あはは♪」

俺は深く息を吐く。

「…アスカちゃん飲み過ぎ…」

アスカからグラスを奪って、代わりにウーロン茶を差し出す。

「何コレ?ウーロン茶?ちょっと茜くん!」

「アスカちゃん、ホントに飲み過ぎ、体調壊すよ?」

奥の厨房からマスターが顔を覗かせてそう言った。

「…何よ…マスターまで…」

そう呟いてアスカはウーロン茶を一気に飲み干し、テーブルに突っ伏してしまった。

「…あたしだって、好きで飲んでる訳じゃないんだからぁ…」

「…アスカちゃん、こんな所で潰れんな」

「潰れてない!」

ガバッと顔を上げるアスカ。

…もう、酔っぱらい嫌い。
…はぁ。

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