秘密

「生中2つ下さ〜い」

「はい」

テーブル席の客から注文が入り、アスカに背を向けて、中ジョッキにサーバーからビールを注ぐ。
それをカウンターに置き、他のバイト仲間でフリーターの恭介が客席まで運ぶ。

俺はいわゆるドリンク担当ってやつ。

カクテルからウイスキーから焼酎、日本酒まで何でも作れるぞ?ははは。

「…ねぇ、茜くん」

「何?」

「…今日お店終わったらあたしに付き合ってよ」

「ダメ。明日も学校あるし、帰って直ぐに寝るの」

「いいじゃん!少し位!」

「あっ。俺でよかったら付き合うよ?アスカちゃん♪」

恭介がアスカの隣に腰掛けた。

「キョンじゃなくて!茜くんがいいの!あたしは!イケメンが好きなの!」

「何気に酷いよ…アスカちゃん…」

恭介は大袈裟に肩を落とす。

「あはは。アスカちゃん茜誘っても無理だぞ?コイツ今恋しちゃってるからカレー食わしてもらったとか、弁当作ってくれただとか…」

マスターがカウンターの中に入ってきて、俺の頭を小突く。

「何それ?恋?茜くんホント?」

「うん。ホント、もう彼女にベタ惚れ、だからもう誘わないでね?アスカちゃん」

とアスカにしれっと言う俺。
ホントの事だから。

「別にいいじゃん、一晩位…」

と、諦めの悪いアスカ。

「だから俺が付き合ってやるって」

恭介も諦めが悪い。

「…茜くん、あたしのタイプだったのに…」

恭介はスルーかよ?

「うん。ごめんね?」

「だから俺が付き合うって♪」

しつこい恭介。

「じゃあ、マスター付き合ってよ?」

「…は?いやいやいや、俺には愛する妻と三才になる可愛い娘が…」

「何勘違いしてんの?飲みに行こうって誘ってるだけなんだけど?」

恭介とマスターが同時に、

「「は?」

「茜くんとならその後から……だったんだけど、あんた達となら朝までカラオケ!よし!歌いまくるぞ!お店終わったら迎えに来るから♪じゃあ後でね?」

そう言って立ち上がると、手を降り、勢いよく引き戸を開けて、店から出ていくアスカ。


「…はぁ…辛い事でもあったのかね?仕方ない…朝までカラオケ付き合ってやるか…」

マスターがボソリと呟いた。

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