秘密

ポリポリとスキンヘッドの頭をかきながら、厨房へと下がって行ったマスター。

ここのマスターはこの付近の若い奴等や、クラブ(ホストもね?)の店員や風俗嬢、常連客の相談役みたいな所があって、やたらとマスターに誰もが悩み相談や失恋話、会社の愚痴やその他色々な事にマスターを頼ってやって来る。

相談したところで問題が解決する訳ではないが、ひとしきり話した後は、スッキリとした顔で店を出て行く。

たまに今日みたいに閉店後にその役目が延長する事もあり、マスターは毎回しぶしぶながらも、それに答えるべく、付き合ってやっている。

要するに、この辺の頼れる兄貴的存在。

現在35才。
昔はかなりのヤンチャだったらしく、あっちの世界の知り合いも多いらしい。

現在は落ち着き、アスカが勤めているクラブの元No1ホステスの響子さんと五年前めでたく結婚。
三才になる可愛い天使を溺愛する、居酒屋、響屋のマスターなのである。


マスターとの出会いは、コンビニでアルバイト情報誌を立ち読みしていたら、たまたま隣に居たマスターが俺に声をかけてきた。

「お前、アルバイト探してんの?だったらうちで働かないか?」

俺は初め、スキンヘッドにサングラスと言う出で立ちの、厳ついオッサンを見て、少しビビったが、サングラスを外し、ニカッと人懐こく笑うその男に興味を持った。

その日のうちにここで働く事に。

バイトを何軒も掛け持ちする位なら、毎日でも来ていいと言うマスターの言葉に甘えて、日曜(たまに土曜日)以外はほぼ毎日ここに居る。

学校では友達らしき奴は居ない俺。
この辺の知り合いの方が、よっぽど友達らしいかも知れない。
その位俺もこの付近に馴染んできたと言う事かな?

しかし、繁華街に馴染む高校生って…はは。

アスカは本来なら、こんな所でキャバ嬢なんかやってるような女じゃなかったらしい。
元々セレブなお嬢様だったアスカ。
不況の煽りを受けて、父親の会社が多額の借金を残して倒産、そのまま蒸発してしまったと聞いた。
当時女子大生だった彼女は大学を辞めて、この世界に入ったらしい。

彼女には出来のいい有名大学に通う弟が二人居るらしく、二人を無事に卒業させる為に、毎日愛想笑いを浮かべて、飲みたくもない酒を無理矢理飲んでいるんだろうな…

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