秘密
「よっ。茜♪」
…げ。
「…そんな嫌そうな顔すんなよ、傷付くな」
「あんたの心臓は鋼鉄で出来てんだろ?傷なんかつくかよ…」
「ひでー、俺のハートは硝子よ?あはは♪」
そう言ってカルチェのライターでダンヒルに火を点ける。
その腕には限定品のロレックス。
「とりあえず、ビールね♪」
とにこやかに笑うコイツはカケル。
察っしの通り、ホスト。
「で?茜?いつになったらうちの店に来てくれる?」
………はぁ。
大袈裟に溜め息をついて、カウンターに座るカケルの前にビールを置く。
「何度もいってるけど、カケルさん、俺まだ高校生だよ?」
「全然問題ない♪酒なんか飲まなくていいから、座ってるだけでいいからさ、頼むよ〜、茜くん?」
「コラ!カケル!また来やがったな?茜は渡さん!」
マスターが厨房からカケルに怒鳴り付ける。
「そんな事言わないでさ〜、週2、いや、週1でもいいから、茜貸してよ〜!お願い!マスター」
と顔の前で両手を合わすカケル。
このカケルと言うホスト、自身もNo1ホストの癖に、アチコチでスカウト活動もやっていると言う。
コイツのお陰でそのホストクラブは、この不景気にも関わらず繁盛し、さらに店舗数も増えていると言う、若いがかなりやり手の食えない男。
「茜はお前らとは違う普通の学生だ、いい加減諦めろ」
「あっ、それって偏見!差別だ!ホストで稼ぎながら医大に通ってる奴もいるんだぞ!」
「そいつらは偉い。だがお前は腹黒い、自分の事しか考えてないだろ?」
「腹黒って…マスタ〜…」
「とにかく。茜は諦めろ、わかったな?」
最後は少し威圧的な視線をカケルに送るマスター。
さすがのマスターの眼力にそれ以上続かないカケル。
「…ごめんね、カケルさん、俺ホストには向いてないよ、愛想笑いとか出来ないし」
「茜はそう言う所がいいんだよ…黙ってても女が寄ってくるタイプだ…はぁ…勿体無いなぁ…茜が来てくれれば売り上げ倍は延びるのに…残念…」
「はは。そんな事ないない」
「…じゃ、試しにうちで働いてみる?」
「カケル!」
「おっと!これ以上マスター怒らすと、この辺で生きて行けねぇな?また来るよ。ごちそうさん」