秘密
ビールにも手を付けずにカケルは1万円札を数枚カウンターに置き、片手を上げ、俺にウインクして店から出ていった。
男にウインクされても嬉しくも糞もない。オエ…
あれに騙されて大勢の女達があいつをこぞって指名するんだろうな。
見ました?あのロレックス?
家一軒買える位の高級車を三台も所有してるらしい。
腹には刺し傷があるとかないとか…
…やっぱり食えない男だ。
「マスター、カケルさんまた金だけ置いてった」
「はっ。アイツはそん位、紙切れ位にしか思ってないんだろ?ビール代だけ引いて、キョンと分けな」
…ありがとうございます。カケル様。
「ラッキー♪マスターありがとう」
恭介がレジに打ち込み、金を崩して俺によこした。
「ほい。半分こ♪」
貴重な臨時収入を受け取りポケットししまう。
正直助かる、最近毎週のように地元に帰ってるから、ガソリン代がかかって仕方なかった。
今週は奏と一緒に帰る。
しかも泊まりで。
ずっと一緒に居られる。
…おっと、いかんいかん、顔が緩んでしまう。
「客も引けたし、そろそろ閉めるか?」
「りょうか〜い♪」
のれんを中にしまおうと恭介が引き戸を開けると、アスカと数人の女の子がそこに立っていた。
「あっ♪アスカちゃん、お疲れ、今店閉めるら、中に入ってて」
恭介が言うとアスカ達は店内に入ってきて、並んでカウンターに腰掛けた。
「お疲れ、アスカちゃん」
俺はカウンターでグラスを洗いながらそう言うと、
「茜くん、ホントに行かない?あたしのオゴリだよ?焼き肉でも何でも食べさせてあげるよ?」
「…行かない、ごめんね、アスカちゃん」
「え〜?茜くん来ないの〜?」
「行こうよ〜。茜くん」
「茜くん来ないならつまんな〜い!」
数人のキャバ嬢達が一斉に声を出す。
「こらこら、お前ら無理言うな、茜は明日も学校なんだぞ?俺とキョンで我慢しろ」
「え〜?じゃあさ。カケルさん呼んでよ、マスター」
「カケルはさっきまで居たけど、直ぐに出てったぞ?まだその辺居るんじゃないか?」
「マジで?あたし探してくる!」
そう言って一人の女の子が外に出ていった。