秘密
グラスを洗い終わり、布巾で磨き上げて、くもりがないか目線まで持ち上げて確認。
よし。ピッカピカ。
「茜くんってバーテンもやれそう…ね?うちの店でバーテンやらない?」
アスカがカウンター越しに胸を…身を乗り出してきた。
「嫌だよ、バーテンなんて、あんな固っ苦しいカッコしたくない」
蝶ネクタイなんてゴメンだ。
目覚○しの軽○さんじゃあるまいし。
「おいおい、アスカちゃんまで茜を引き抜くのやめてくれよ」
「までって、他に誰かに引き抜かれてんの?茜くん」
「カケルさん見つけてきたぁ♪」
先程店を出た女の子がガラリと引き戸を開け、カケルに腕を絡めて、店に戻ってきた。
「…アイツだよ」
マスターはカケルを指差す。
「…やっぱり…そうじゃないかと思った」
「なになに?今から飲み行くの?」
カケルはアスカの隣に腰掛けた。
「こんちは♪アスカちゃん♪」
ニッコリと笑うカケル。
「……こんちは」
この辺りの奴等は夕方おはよう、深夜はこんちは、それが当たり前。
「カケルさん、他にも誰か呼んでよ、茜くん来ないからつまんないよ」
カケルを連れてきた女の子がそう言うと、
「茜来ないの?」
「うん。明日も学校あるし」
「…学校といえば、カケルさん探してた時、高校生位の女の子がrainに出入りしてる奴等に絡まれてたなぁ…大丈夫かな?けっこう酔ってたみたいだったし…」
rainと言う店はちょっとタチの悪い連中がよく集まる、立ち飲みのショットバー。
噂だがクスリの売買等もそこで行われてるらしい。
「お前、それ早く言え、場所何処だ?」
「……ごめんなさい、rainの前だよ」
シュンとする女の子の後ろを通り過ぎて、店から出ていくマスター。
俺と恭介とカケルもその後に続く。
「女の子達はここで待っててね?ちょっと行ってきます♪」
そう言うとカケルは最後に店を出て引き戸を閉めた。
俺達四人が一緒に歩いているのが珍しいのか、付近の奴等が指差し、こちらを伺っている。
確かにマスターとカケルの組み合わせはかなり目立つ、二人ともこの辺りじゃ有名だし、何かトラブルがあったんじゃないかと、遠巻きに後ろから着いてくる奴まで居る始末。