秘密
「……今まで誰もあたしの事、見向きもしなかったのに、手のひら返したように…
当然だよね?
あたしは可愛くなったんだから。
それこそ連れて歩いたら自慢出来る程に…
気になる男の子は誘えばみんな応えてくれた。
彼女が居るとか関係なく、みんな結局は可愛い子がいいんだよ…
あたしは自分に自信がついた。
あたしは学校でいちばん女の子に人気がある茜に告白しようと思った。
もし茜があたしの彼氏になってくれたら、あたしの作り物の顔は本物になるって思ったんだよ。
あっさりOKしてくれた時は正直、拍子抜けだったけどね?
もう誰もあたしを汚いものを見る目で見ない、カッコいい彼氏も出来て、あたしは過去の自分を捨てて、今のあたしが本物のあたしになった。
嬉しかった。
いいことは続くもので、中学の時…憧れてた彼から誘われたの…
あたしもあんな顔してたくせに、諦めが悪くて…彼と同じ高校受験したりして…
でも彼の彼女も同じ高校に来てて…
二人はいつも一緒で…
誰もが認めるお似合いのカップル。
そう見えた。
まさか彼から誘われるなんて思っても見なかったから、あたしはただ見つめるだけしか出来なかった中学時代を思い出して、胸がときめいた。
あの彼から誘って来るなんて、夢みたいだった。
彼は中学時代のあたしの存在すら知らない…
でも、あの綺麗な彼女に勝ったんだって思って、あたしは嬉しくてたまらなかった。
…でも、違ったの…
彼はあたしの事なんか好きでも何でもないんだよ…
彼は彼女しか好きじゃないの…
おかしな話だけど…他の女を抱く事で、彼女への気持ちを確認してるの…
やっぱり彼女が最高だって…
…キスもセックスも彼女以上の女は居ないって…
…それを確認する為に他の女を抱くんだって…
そんな事したら彼女にフラれるよ?って言ったら、彼はこう言ったの…
「アイツは俺とは別れられない、アイツの父親、リストラされて、嫁に浮気されて離婚して…うちの会社で拾ってやったんだよ…だから、アイツは俺の言いなり…」
……だから、茜?
…奥村さんの事…いくら好きになっても無理だよ?
…彼女は佑樹とは別れられないんだから……」