秘密

ひとしきり話終えると、美里は深く溜め息をついた後、笑顔で顔を上げた。

その表情は無理して笑った顔じゃなく、自然と溢れたものだとわかる位に、穏やかな笑顔だった。

｢…だからさ？あたし達、もう一度キチンと付き合おうよ？もう浮気したりしないし、他の男の子と遊んだりしない…それとも…整形女は嫌？｣

｢……お前さ、今も、佑樹の事…好きなんだろ？｣

俺がそう言うと美里は顔を曇らせた。

……図星か…

｢……だからって、どうにも出来ないじゃない…好きになっても…無駄なんだから…｣

｢…好きって気持ちは、そう簡単に諦められない…と思う、だから美里は綺麗になりたかったんだろ？佑樹に振り向いてほしかったから…｣

美里の過去の話を聞いて、美里が色んな男と遊んでると言う噂に、そんな理由があった事に妙に納得してしまった。

俺達は似ている。

過去を忘れる為に、一度自分を捨てた事。

好きでもない奴と付き合って、そいつに自分の好きな人を重ねて、心と身体の乾きを満たしていた事。

やってはいけない事なんだろうけど、バカな俺達はそうやって心の隙間を埋めていた。

｢……無理だよ、佑樹は奥村さんの事しか見えてないから…でも…あの佑樹に抱かれてるって思うと…夢が叶ったような気がして…それだけで、少し、嬉しかった…｣

美里はうつ向き、力なく笑う。

他の女を抱きながら、いつも奏を抱いているつもりでいた。
美里の言葉が胸に突き刺さる。

｢…諦めんの？｣

｢……仕方ないじゃない…｣

｢…俺は諦めないけどね？だからお前とは付き合わない、今更かもだけど、もう他の女に奏を重ねたりしない…だから、お前も他の奴に佑樹を重ねるのは、もうやめろ…それから、もっと自分を大事にしろ｣

｢…あたしは自分がいちばん大事だよ？だからやりたいようにやってきたんだよ…｣

｢…そんな事しても、虚しいだけだろ？俺も…お前と同じだったから…よくわかるよ…｣

｢……同じ？｣

｢うん。同じだ…過去の自分を忘れたかった、でも…奏のお陰で立ち直れた、これからの目標も出来た…だからお前の話を聞いても奏を諦めたりしない｣

｢……そんな事、無理だよ｣

｢諦めたらそこで試合終了だ｣

言うと俺は美里に笑ってみせた。