秘密
◆◆◆


朝のSHRが始まっても奏は教室にやって来ない。
佑樹と何かあったのか?

さすがに今朝のあれはマズかった…
……奏…
佑樹に責められてるんじゃないか?俺が体育館なんかに寄らなければ…

くそ。佑樹め…
奏になんかしやがったらブッ殺し決定。

昨晩の美里の話し…

以前保健室で奏と話しをしたのを思い出した。
奏はあの時、佑樹と別れたがっているように思えた、でも、離れられないって…

美里の話を聞いて、その理由がわかった。

奏は佑樹の事なんか好きで付き合ってるんじゃない。
父親の為に仕方なく佑樹と付き合ってるんだ。

リストラされて、さらに離婚…

どう言う経緯で佑樹のうちの会社に拾ってもらったかはわからないけど、そんな中で、佑樹に言い寄られたりしたら、まず断れないだろう。

この不景気に正社員で雇ってくれる会社なんかそうそう無いから。

夜の仕事をしている俺は、そう言った話をよく聞く。

失業保険もいつまでもは貰えないし、家族も居る、家を手離し、いい歳したオッサンが、アルバイトを掛け持ちして、生活していると言う話しも少なくはない。

奏は父親の為に自分を犠牲にしいる。
…好きでもない佑樹に抱かれてる。

恐らくだけど…
…多分奏は…俺の事が……

まだそこまではいかないかも知れないけど、確実に俺の方に気持ちがあることは間違いない…

…と、思う。

しかし困ったな…
…父親を人質にされてるとなると…
俺に一体何が出来る?

それだけこの問題は難しい、まだ子供な俺に出来る事なんか何にもない。

ただ好きなだけじゃ奏は手に入らない…

苛立ち、ガシガシと頭をかく。

佑樹が奏を諦めてくれるのが、いちばんいいんだけど…

ああっ!くそっ!
どうすりゃいいんだ!

わからない、わからないけど…

絶対に諦めない。

これだけは言える。

元バスケ界期待の星をなめんな。
最後の一秒だって諦めたりしない。
眼鏡男子に負けない、体力と根性はある。

つもりだ。

佑樹。
必ずお前から奏を奪ってやる。

とりあえず今は奏の事が心配だ。

…奏…何かあったのか?

携帯を開き、奏にメールを打つ。


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