秘密
◇◇◇


……確かにこれはパジャマには違いない。

でも…

こんなに沢山フリルが付いた物…
…一体何処に売ってたんだろう?

………………

せっかくお母さんが私の為に買ってくれたんだから…

……えいっ!着ちゃえ!

脱衣室の鏡に映った自分を見てみると、フワフワと膨らんだ、レースとフリルを身体中に纏って少し膨らんだ私。

……これは…恥ずかしい…

ちっちゃい子ならこれ位のフリルも違和感なく、可愛いのかも知れないけれど、私が着るとまるで変なコスプレしてるみたいで、かなり恥ずかしい…

コレ着て佐野君の前に出るの?

……それにコレ…普通に洗濯出来なさそう…
なんて現実的な事を考えてしまった。

……とりあえず。

いつまでもここに居る訳にもいかない。

先にお風呂頂いてしまったから、早く出ないと。

バスルームを出てリビングへと向かう。

…う〜、恥ずかしいよう…

「……あの…先にお風呂頂きました…」

キッチンで洗い物をしてたお母さんが、

「きゃあぁ♪奏ちゃん可愛い♪やっぱり似合うわ♪」

「そ、そうですか?ははは…」

「うん。とっても♪やっぱりいいわぁ、女の子は♪」

リビングのソファを見てみると、お父さんと静さんはそのままそこで寝てしまっていた。

かなり飲んでる様子だったから、潰れちゃったみたい。

よかった。この格好見られなくて…

「あの、佐野君は?」

「お父さん達、潰れちゃったから二階に毛布取りに行ってる、もう朝まで起きないわよ、全く困った人達よね?ふふふ」

お皿を洗いながら、笑うお母さん。

なんかいいな、キッチンにお母さんが居るって。

佐野君のお家は、とても暖かくて居心地がいい。
賑やかで家族団らんって感じがして、久しぶりにお母さんがまだ家に居た頃を思い出した。

お母さん。元気かな?

お母さんが居なくて寂しくはないけど、元気かどうか、それだけが心配…時々メールのやりとりはしてるけど、うまくやってるかな?

佐野君の事を好きになった私は、今ならお母さんの気持ちがわかるよ。

好きな人が出来たお母さん。
その人とずっと一緒に居たい。


……佐野君と…ずっと一緒に居たい…


< 198 / 647 >

この作品をシェア

pagetop