秘密


「奏…」

リビングの入口を塞いでしまっていた私の背中から声がして、振り替えると毛布を抱えた佐野君。

「あ、ごめんなさい」

慌ててリビングの中に入る私。

「髪…乾かしてやるから、俺の部屋、行ってて」

佐野君はそう言って私の横をすり抜ける。

……この格好……
絶対笑われると思ってたのに…
佐野君はこんな事位で笑ったりしないんだね。

「うん。でも、自分で乾かせるから…」

「いいから、行ってて」

ソファで毛布を広げる佐野君。

「…うん」

「あ、奏ちゃん。今日は茜の部屋で休んでね?茜は静の部屋で寝せるから」

「はい、ありがとうございます」

リビングを出て佐野君の部屋に入ると、ベッドは綺麗なピンクのシーツがかけてあって、お母さんはよほどピンクが好きなんだと思って、小さく笑みが溢れる。

…ドライヤ−、何処にあるんだろ?

ドライヤ−を探そうと部屋の中を見ていると、佐野君がドアを開け入ってきて、棚の中を物色していた私を、いきなり後ろから抱きしめた。

「…!っ」

「兄貴達が寝てくれてよかった…」

「…ふえ?」

いきなり抱きしめられて驚いてしまった私は、間抜けな声が出てしまった。

「…こんなに可愛い奏…二人に見られたくないから…」

「…か…可愛い?」

「うん。スゲー可愛い…ヤバイ…」

「な、何がヤバイの」

「……なんか、ちょっと…エロい…」

…こんなにフリフリで、ベビードレスみたいなのに…エロいって…佐野君。

笑われなかったけど、私は笑われるよりも、もっと恥ずかしくなってしまった。

「さっ、佐野君?誕生日プレゼント、なんか欲しいものある?」

とりあえず話題を変えようと、私は佐野君に聞いてみた。

「……キス…」

「えっ?」

「…キスして欲しい…」

耳元で佐野君が呟く。

「奏の方からキスして欲しい」

一気に私の心臓は激しく鼓動する。
急に顔が熱を持ったみたいに熱くなる。

佐野君は回した腕に少し力を入れて、さらにギュッと私を抱きしめる。

後ろから私の頬に自分の頬を刷り寄せて、囁くように…

「……ダメ?」



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