秘密
……ダメじゃない。
けど…恥ずかしい…
佐野君とはもう何度もキスをしたけれど、私の方からキスした事は一度も無い。
どうやればいいのかわからない。
いつも佐野君は私が欲しい時にキスをくれる。
不意討ちもよくあるけど…
でも佐野君のキスは、いつも私を幸せな気持ちにしてくれる。
佐野君に宝物を貰ってばっかりの私。
佐野君が欲しがってるんなら私だってあげなくちゃ。
恥ずかしいとか言ってられない。
意を決しての腕の中から佐野君の方に向き直った。
見上げると優しい笑顔の佐野君。
……私からキス…でも、届かない…
一瞬考えてみる。
あ。
「佐野君。あそこに座って?」
勉強机を指差す私。
「へ?あ、うん」
佐野君は言われた通りに机の端に腰を下ろした。
私はその目の前に立つ。
よし、目線バッチリ。
「……あの、佐野君、目、閉じて…」
「……こう?」
「……うん」
佐野君の顔が瞳を閉じただけなのに、さらに整って見える。
長い睫毛。
長めの前髪にかかる閉じた瞳。
通った鼻筋。
自然に閉じた唇
…その全てにドキドキする。
ゆっくりと佐野君の唇に指先で触れてみる。
佐野君はピクリと肩を揺らす。
しっとりと柔らかい唇。
その手を佐野君の頬に滑らせ、顔を近付ける。
……触れ合う唇と唇。
佐野君は私の腰に両手を回し、私の身体を引き寄せる。
私も片手を佐野君の背中に回し、佐野君を抱きしめる。
長い降れるだけのキス。
唇を離し佐野君と見つめ合う。
また、どちらともなくお互い引き寄せられる。
何度も確度を変えて、少しでも離れたら、さらに深く吸い寄せられる私達。
絡み合う吐息に頭の中が真っ白になっていく。
佐野君。
大好き。
大好き。
涙が出そう…
名残惜しそうにお互いの唇が離れると、佐野君は私の肩に顔を埋めて、
「…サイコーの誕生日プレゼントだ…ありがと、奏」