秘密



佐野君が部屋から出ていって、やることが無くなってしまった私は、自然と本棚に目がいってしまった。

あれ?


あの漫画本、佐野君のアパートにもあった。
ふふ、よっぽど好きなんだね。


1巻を手に取る。


漫画は殆ど読まないけど、バスケの事もっと知りたいし。
佐野君のお気に入りの漫画…
読んでみようかな?


ベットに腰掛けページを捲る。


……………………
………………










…一気に読んでしまった。
この漫画凄く面白い。

2巻を読もうと立ち上がり、本棚に向かう。

−コンコン…

「奏?入るよ?」

「はい」

佐野君がお風呂から上がったらしく、濡れた頭にタオルを乗せて部屋に入ってきた。

……よかった、裸じゃない。

漫画本を手に持って本棚の前に座っている私の横に佐野君は座ると、

「それ、スゲー面白いだろ?」

「うん。凄く面白い、あのね。主人公の男の子がダンクしようとして失敗しちゃうの、でもね?凄く高くジャンプするの、なんか初めて佐野君に合った時の事思い出しちゃった」


佐野君は笑うと私の手から漫画本を取り、それをパラパラと捲る。


「この漫画、アパートにも置いてるよね?」

「ははは、うん。時々読みたくなるんだ、読んでていいよ、俺、髪乾かす」

私に漫画を渡すと佐野君は髪を乾かし始めて、私は本棚に漫画を戻した。

「読まないの?」

「うん。佐野君のアパートにもあったから、じっくり読みたいし、今日はいい…」

それより佐野君とお話していたいから…

「はは。好きな時に勝手に来て読んでいいよ」

「…うん」

佐野君はなんで私に合鍵をくれたんだろう?

その時は嬉しくて、あまり深く考えなかったけど、改めて思い返してみると、私って佐野君にとってはどんな存在なんだろう?

私はただ一緒に居たくて、佐野君の優しさに甘えてしまって、佐野君の気持ちはあまり考えた事がなかった。

彼女に振られたって言ってた。
それって失恋したって事だよね?

それなのに私とこうやって一緒に居てくれているのは…

佐野君。

……私達…もうただの浮気じゃないと思うのは私だけ?



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