秘密
ありがとうと言った奏の気持ちが素直に嬉しくて、奏の肩を抱き、自分の元に引き寄せた。
「…俺、自分のやりたい事も見つかったし、過去の自分にも踏ん切りがついた。これからの目標の為にも頑張ろうって思えるようになった。そう思えるようになったのも奏のお陰、だから、俺の方こそ、ありがとう、奏」
俺を見上げる奏がたまらなく愛しい。
奏と一緒に居れば居る程、昨日よりも今日、今日よりも明日、日々想いは膨らんでいく。
奏の白い頬に手をあてると、少しひんやりとしていて、その冷たさが俺の掌の熱で次第に和らいでいく。
ゆっくりと顔を近付けると、奏はそれに応えるように顔を上げて、
「あ!流れ星!」
「え?どこどこ?」
「あそこ!」
空を指差す奏。
その指差す方を見てみるけど、そこにあるのは蠍座の瞬き。
「もう消えちゃった…」
「でも、見れたじゃん」
「…ほんの一瞬…お願い事する隙もなかった…」
残念そうに眉をハの字にする奏。
「だよな、流れ星なんて一瞬だから、願い事三回も唱えるなんて出来ないよな」
「え?三回も?」
「うん。昔からそう言うだろ?」
「…知らなかった…あの一瞬で三回は無理かも…」
奏はしょぼんと肩を落とした。
「冬になったら…沢山見えるから、その時また一緒に見よう…」
「冬に?一緒に?」
「うん。その時は幾つも見えるから、願い事、いっぱい考えとかないとな?」
そう言って笑って見せると奏は、
「うん」
今日一番だと思っていた笑顔よりもさらに眩しく微笑んだ。
ずっとその笑顔を見ていたけど…
「今日はもう遅いし、そろそろ寝ようか?」
「そうだね、今何時だろ?」
部屋にある壁掛け時計を窓越しに見ると、すでに日付が変わっていた。
「はは。もう明日になってる…」
「ううん、まだ、今日だよ、だから佐野君…」
奏は俺の腕を引き、少し前のめりなった俺の頬に軽く唇をあてると、
「誕生日プレゼントのオマケ…」
うつ向き、小さい声でそう言った。
まだ奏の唇の感覚が残る頬を手で押さえて俺はしばし呆然。
オマケの方がかなり嬉しいんですけど…