秘密


「あっ、先輩!おはようございます!」

体育館に入るとリョータ君が元気に挨拶して私達に向かって走ってきた。

「奏さん!来てくれて感激っす!」

「おはよう、リョータ君、地区大会優勝おめでとう。県大会も頑張ってね」

「はい!頑張ります!っと、腕、どうしたんですか?」

…そうだよね、気になるよね?

「…ちょっと、転んじゃって、大した事ないから、大丈夫」

そう言って笑って見せると、リョータ君は何故か顔が赤くなった。

「はいはい、減るから、あんまり見るな」

佐野君がリョータ君を回れ右させて背中を押すと、

「…先輩が羨ましい…俺の彼女なんて…」

「何?お前、彼女居んの?リョータのクセに生意気な…」

「どっかのガキ大将の弟分が言いそうな事言うの、やめて下さいよ…」

「…俺はスネ夫かよ…」

「先輩!おはようっす」

他の部員達も私達の所に集まってきた。

「ああ。おはよ、今日は俺も混ぜての紅白戦やるぞ?」

「マジすか?」
「やった!」
「俺、先輩と同じチーム!」

「お前ら三年とはやんね、二年と混ざる」

「えぇ〜?先輩に敵う訳ないじゃないすか…」

と、ユウト君が口を尖らす。

「そんな事ないない、俺も試合なんて、あの時依頼だからな…」

佐野君がそう言うとリョータ君達三年生は表情を曇らせた。

……あの時って佐野君…

もしかして、三年生の時の決勝戦?

「……あの、佐野君?」

「ん?何?」

「……膝…大丈夫?」

「全然大丈夫」

「ホントに?」

「ホントホント、一試合位なんて事ないよ、心配すんな」

笑うと佐野君は私の頭を撫でる。

「先ぱ〜い……下級生には刺激が強いみたいですよ?それは…二人きりの時にやって下さいよ…」

コースケ君が呆れたように言う。

「は?これくらいでR15か?はは、お前ら可愛いな?」

佐野君は撫でるのをやめない。

下級生の子達は赤くなり視線を泳がせていて、私も恥ずかしくなって顔が熱くなってしまった。

「…茜…お前はイチャつきに来たのか?」

後ろから声がして振り向くと、

「あ。先生、うん、そうだよ」

高田先生の拳が佐野君の頭に落ちた。


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