秘密


またバスケが出来るの?佐野君


それって凄い。

……でも…

アメリカは遠い……

佐野君と…もう会えなくなるの?

いつから行くの?
ずっとアメリカに居るの?
何年位?
いつ帰ってくるの?


………胸が痛い…苦しい…


「どうだ?茜?考えてみないか?」

先生の言葉にハッと我に返る。

「…あ…いや、無理…です…」

「どうして?」

「…アメリカなんて…考えてもみなかったし…それに…怪我の事も、あるし…」

「それなら心配はいらない、向こうのハイスクールなんだけどな?バスケのNBA育成校みたいな所なんだ。プロの専属トレーナーも居るし、個人にあったトレーニングメニューも考えてくれる、膝に負担のかからないようなプレーが出来るスタイルに身体を作り直してくれるよ、医療施設も充実してるし、お前にとっては素晴らしい環境が整ってる」

「…そんな事…いきなり言われても…」

佐野君は酷く狼狽している様子。

「…奏さんからも言ってやってくれないか?」

いきなり先生が私に話を降ってきたから、私は慌てて顔を上げた。

「…あのっ、私…」

どうしよう…言葉が続かない。

私は何を言ったらいいのかわからず、視線を泳がせていると佐野君が、

「…先生、やっぱり無理だから」

「…茜」

「現実的に考えても無理だよ、アメリカなんて…費用の事とかもあるし…行った所で成功するとは限らない、それに俺、将来教師になるって決めたんだ…」

「…教師になりたいのか?」

「うん。先生みたいな熱血教師に、ははは…」

「…茜、もう一度ご家族とも話し合って、考えてみてくれないか?俺はお前ならやれるって確信してる、お前程の選手を今まで見た事がない、だから…」

「…もういいよ、先生、バスケは何処でだって出来る、それに、正直怖いんだ…情けないけど…未だにあの決勝戦の時の事、夢に見るんだよ…もう、あんな思いは…したくない…」

「……茜」

佐野君は立ち上がると、

「はい、話し終わり。肉食わしてくれるんだろ?」

「…ああ。県大会前の壮行会だ」

「やり、先生の財布空になるまで食ってやる」

先生は、勘弁してくれ、と苦笑いをしていた。


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