秘密


驚いたような表情で俺を見上げる奏。


その顔を自分の胸に押しあて奏の頭に頬を寄せ、もう一度言う。


「……奏が好きだよ」


奏の身体が強ばる。


「……あの…私…」

「わかってるから…ただ…俺の気持ち…知って欲しかっただけだから」


奏の口からアメリカに行けと言う言葉を聞きたくなかった。


奏は俺と離れるのはさほど辛くは無いんだろうか?


お互い今まで言葉には出さなかったけど、気持ちは通じあってると確信してたのは、俺の思い上がりだったんじゃないかとさえ思えてくる。


俺はもう奏無しでは生きていけない、と言うのは少し大袈裟だけど、これから先ずっと一緒に居たいと思ってる。


その為にも今の奏の状況をなんとかしてやりたいし、なんとかしたい。


「…今はただ、一緒に居たいんだ…」


今の俺が奏に言える精一杯の言葉。


奏は俺の背中に手を回し、シャツをギュッと掴んで、


「……私も…佐野君と…一緒に居たいっ」


……ほら。
やっぱりそうだろ?
奏も同じ気持ちだ…


好きだと言ってもらえないのは残念だけど、そのシャツを掴む掌から気持ちは伝わってくる。


今はそれだけで充分だ。


欲しくてたまらなかった奏。


その奏の気持ちが俺の中に入り込んでくる。


入学して直ぐに一目惚れした女の子。


とても綺麗な子だけど、寂しそうな笑顔のその子をいつも目で追っていた。


初めて異性を感じた。


二年になって同じクラスになり、しかも隣のVIP席。


始めはきっかけが欲しくて、悪戯心で送ったメール。


思わぬ反応に少し拍子抜け。


そこからが始まり。


日に日に奏に惹かれていった。


毎日の学校が楽しくなった。


友達なんか一人も居なかった俺が、普通に高校生らしく過ごせるようになったりして。





……奏。


好きなんて言葉じゃ足りない。




愛してる。


奏。




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