秘密
「ああっ!ソレ!俺が育てた肉っ!先輩っ!」
シシカバブー、旨い。
シシカバブーとは、肉類をローストして調理した総称…
なんでシシカバブーって言うのかは知らないけどね?
「奏も食べる?」
「無視っすか?」
肉を奏に差し出すと、それをじっと見て、次に勢いよくかぶり付いた。
「おいひい♪」
「だろ?」
「………もう勝手にして…」
何やらリョータが後ろでブツブツ言ってるようだけど、そんな事は全然気にならなくて。
肉は旨いし、海は綺麗だし、奏は隣に居るし。
「こら。茜!食ってばっかないでお前も焼け!」
高田先生が頭にタオルを巻いて、汗だくになって肉を焼いていた。
…仕方ない、手伝うか。
食べ掛けの肉を奏に渡し、先生の隣で肉を焼く。
バーベキューの煙がモクモクと空へと立ち登り、見上げると眩しい太陽の陽射しが煙を溶かして砂浜に降り注ぐ。
「先生、私も手伝います」
奏が隣にやって来て、野菜を網の上に乗せていく。
「あ。奏さんはいいから、怪我してるし」
「大丈夫です。やらせて下さい」
「じゃ、これで野菜を反して」
先生は奏にトングを渡し、それでクルクルと器用に野菜を焼く奏。
「手。熱いだろ?コレはめて」
軍手を奏の手に嵌めてやると、
「先輩達って、ホントにラブラブですね〜?見てて照れちゃいますよ」
と、タケが冷やかす。
「……お前も彼女作れば?」
「それが簡単に出来れば苦労しませんよ…」
「先輩コイツ、リョータに好きな子盗られたんですよ?あはは♪」
ユウトがタケを指差し笑う。
「ユウト!余計な事言うなよ!」
タケがユウトを追いかけ、ユウトは肉を持ったまま笑いながら走って逃げる。
あいつら…
呑気なモンだな…
俺が中学の時はそんな余裕なんて無かったし、興味もなかったって言うのに。
最近の中坊は…
なんて、オヤジ臭い俺。
「おりゃあぁぁっ!」
−バシャアァ…
タケのドロップキックがユウトの背中に決まり、二人は海の中に沈んだ。
「ぎゃははは!」
「何やってんの?」
「俺も俺も♪」
次々に波打ち際へと駆け出す後輩達。