秘密


「…おはよ、生徒会長。今日だけ、勘弁して?」


佐野君は前髪をかき上げながら、佑樹にそう言って笑ってみせた。


「…俺は生徒指導の教師じゃないよ…奏、行こう」

佑樹が私を促し歩き出しすと、

「あ。ちょっと待って、横田」

拓也君が佑樹の腕を掴んでそれを引き止めた。

「球技大会の事なんだけどさ」

「大会の?」

「組み合わせってどうやって決めるんだっけ?」

「去年もやっただろ?」

「あはは。忘れた」

「……各チームの代表がくじ引きするんだよ」

「あ。そうだった、今思い出した、あはは。てかさ?俺達あんま練習出来なかったんだよ、始まる前に体育館使えないかな?」

「…無理だよ」

「え〜っ?お願いお願い!生徒会長〜っ!」

両手を合わせて拝む拓也君に、佑樹は深くため息をついた。

「……先生に頼んでみるよ」

「マジで?さすが生徒会長!ありがと横田♪さっそく頼みに行こうぜ?早い方がいいだろ?佐野!優勝は俺がいただく!」

「ちょっ、おい!」

拓也君は佑樹を引っ張りそのまま走って行ってしまった。

拓也君、やる気満々…

でも、助かっちゃった…


佐野君はわかってるって言ってくれてたけど…


佑樹と居るところ、佐野君に見られたくない…


別れたいと思っていても…それすら出来ないくせに…


…それでも佐野君と一緒に居たくて…


……私って…
心の中は、凄く醜いのかも知れない…


「…美樹ちゃん、愛犬のしつけがいいね?」

「飼い主として当たり前よ」


美樹ちゃんと佐野君が何か言ってるのに合わせて、私はその汚い感情を胸の奥に押し込めた。


「愛犬って?」

「うちのポチよ」

「?」


私は意味がわからずキョトンとしていると、


「腕、もう大分いいの?」

佐野君が私の腕を指差した。

「うん。後一週間位だって…あの…佐野君。その色…凄く似合ってるよ」

「だろ?でもシロが怯えてた、はは」

「怯えてたの?」

「最初だけね?直ぐに俺だってわかったみたい」


佐野君に怯えるシロ。

ちょっと見てみたかったな。



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