秘密









「綾香ちゃ〜ん、パパと一緒にケーキ食べまちゅか〜?」


……あんた誰?


「たべる〜♪」

「あっ、こんな時間にケーキなんか食べさせないでよ、晩御飯が食べられなくなるじゃない!」


俺がカケルの店から買って来た、ケーキの乗った皿を綾香から取り上げる響子さん。


「あ〜ん、けーきー」

「ダーメ。これは明日食べようね?」

「いいじゃん、ひとつ位…ね〜?綾香〜?…ママのケチ!」


……だから、あんた誰?


と、何度も言いたくなる位の激変を遂げているマスターに、頭の中で何度もツッ込みを入れる。


俺か恭介が休む日は、マスターの奥さん、響子さんが店に入るようになっていて。


この繁華街には深夜までやっている、水商売向けの託児所があり、綾香をそこに連れて行く為に、晩飯を食わせてから託児所に連れて行く事になっている。


「アスカちゃん♪俺達も早くあんな可愛い子供作ろうね?」


のに……

何でお前が居るんだ、恭介…


「ばっ…なっ、何言ってんのよっ!いい加減離しなさいよっ!」


カウンターに座ってまでも、アスカの手を離さない恭介の手を、必死に振りほどこうとそれを振り回すアスカ。


「アスカちゃんデレてる〜♪可愛いっ!」


ガバッとアスカを抱きしめてしまった恭介。


「ぎやっ!何すんのよっ!離れろっ!ばかっ!」

「い〜や〜だ〜。は〜な〜さ〜な〜い〜♪」


……結局…上手くいった訳ね…


恭介がアスカの手を引き満面の笑顔で引き戸を開け、店に入って来た時は正直驚いた。


「きょんちゃん、らぶらぶ〜」

「こら!キョン!他の客も居るんだぞ?いい加減しろ!綾香の教育上にもよくない!」


さっきとは打って変わって、パパから父親になったマスター。


「ぱぱもままに、らぶらぶするよ?」

「…綾香ちゃん、それホント?」


俺が聞くと、綾香は大きな瞳をクリクリさせて。


「うん!おふとんのなかで、らぶらぶするの」


……マスター…


あんたの方が教育上良くないだろ?…


< 352 / 647 >

この作品をシェア

pagetop