秘密
「綾香ちゃ〜ん、パパと一緒にケーキ食べまちゅか〜?」
……あんた誰?
「たべる〜♪」
「あっ、こんな時間にケーキなんか食べさせないでよ、晩御飯が食べられなくなるじゃない!」
俺がカケルの店から買って来た、ケーキの乗った皿を綾香から取り上げる響子さん。
「あ〜ん、けーきー」
「ダーメ。これは明日食べようね?」
「いいじゃん、ひとつ位…ね〜?綾香〜?…ママのケチ!」
……だから、あんた誰?
と、何度も言いたくなる位の激変を遂げているマスターに、頭の中で何度もツッ込みを入れる。
俺か恭介が休む日は、マスターの奥さん、響子さんが店に入るようになっていて。
この繁華街には深夜までやっている、水商売向けの託児所があり、綾香をそこに連れて行く為に、晩飯を食わせてから託児所に連れて行く事になっている。
「アスカちゃん♪俺達も早くあんな可愛い子供作ろうね?」
のに……
何でお前が居るんだ、恭介…
「ばっ…なっ、何言ってんのよっ!いい加減離しなさいよっ!」
カウンターに座ってまでも、アスカの手を離さない恭介の手を、必死に振りほどこうとそれを振り回すアスカ。
「アスカちゃんデレてる〜♪可愛いっ!」
ガバッとアスカを抱きしめてしまった恭介。
「ぎやっ!何すんのよっ!離れろっ!ばかっ!」
「い〜や〜だ〜。は〜な〜さ〜な〜い〜♪」
……結局…上手くいった訳ね…
恭介がアスカの手を引き満面の笑顔で引き戸を開け、店に入って来た時は正直驚いた。
「きょんちゃん、らぶらぶ〜」
「こら!キョン!他の客も居るんだぞ?いい加減しろ!綾香の教育上にもよくない!」
さっきとは打って変わって、パパから父親になったマスター。
「ぱぱもままに、らぶらぶするよ?」
「…綾香ちゃん、それホント?」
俺が聞くと、綾香は大きな瞳をクリクリさせて。
「うん!おふとんのなかで、らぶらぶするの」
……マスター…
あんたの方が教育上良くないだろ?…