秘密





「あ。坂口さん、いらっしゃい♪あれ?女の子連れなんて珍しいじゃん」

今日は休みなのに、いつの間にか接客中の恭介。

殆どが常連客の響屋は、皆顔馴染みばかりで、恭介が休みだろうがそんな事誰も知る筈もなく、普通に注文してくるもんだから、恭介も当たり前のようにそれに応じている。

そんな恭介を横目でチラチラと盗み見ながら、ピンク.スクァーレルをちびちびと啜るアスカ。

いつも生ビールや焼酎(しかもロック)をオッサン並みにグイグイと空ける癖に。


今日はどうした?
えらくしおらしくなっちゃって…


なんて、聞くまでもなくその理由は歴然だけど、アスカらしくないその態度に、好奇心が半分、悪戯心が半分で、再びいじりたくなってしまった俺。


「アスカちゃんって、いつからキョンちゃん好きだったの?」


やっぱり好奇心の方が勝っていて、とりあえずストレートに聞いてみた。


「!っ…ぶはっ!」


口を付けていたピンク.スクァーレルを吹き出すアスカ。


……おもしれぇ。


「ゴホッ、ゴホッ!…っ!」

「あっ、アスカちゃん、大丈夫?茜、おしぼり」


むせるアスカの背中を撫でる恭介におしぼりを渡すと。


「もう、今日は飲んじゃダメって言ったじゃん」


テーブルを拭きながら、アスカからグラスを取り上げる。


「飲んでないわよ…カクテルなんて、ジュースよ、ジュース…」


口を尖らせ屁理屈を言うアスカに、俺は理屈で返した。


「アスカちゃん…リキュール系はビールよりアルコール度数高いんだよ?」

「え?そうなの?」

「うん。甘くて誤魔化されやすいけどね?だから女の子にガンガン飲ませて潰させるには、カクテルがいいみたい」


実際そういったやつを何人も見てきた。


「そう!だから、今日はあんまり酔ったらダメ!二人の初めての夜なんだから!今夜は寝かせないから、覚悟してね?アスカちゃん…」


後半声のトーンを落として、アスカの耳元に囁いたみたいだけど、目の前に居る俺には全部ダダ漏れ。


見るとアスカは一気に首まで赤くなり、そんなアスカの頭を恭介は笑いながら撫でていた。


…キョンちゃん
短冊に願いをかけたのか?


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