秘密




「誰って……、俺だよ、奏…」


「え?…、俺って…?痛っ!」



起き上がろうとした奏は怪我をしているのを自覚出来ていないようで、一瞬だけ身体を浮かすけど、またベッドに沈んでしまった。



「急に動いたらダメだろ?肋にヒビが入ってるんだから」


「肋に?……、ヒビ?」



苦痛に表情を歪めながら、奏は状況がわかっていない様子。



「頭にも怪我してる」


「頭にも?……痛っ」



頭に手をやり、もろに傷口に触れてしまったらしく、再び顔を歪める奏。



「だから、動いちゃダメだって…、大丈夫か?吐き気とか無い?」


「え?…、私…、何で?……ここ病院?」



どうやら事故に遇った事を覚えていないらしい。



「奏は昨日事故に遇ったんだよ、覚えてない?ここは総合病院」


「………事故に?私が?」


「うん。でも…、目が覚めてよかった……」



今すぐ抱きしめたいけど怪我してる奏にそんな事出来る筈もなくて、立ち上がり奏に身体を寄せて顔を近付ける。



「……、ちょっ、嫌っ!」



急に身体を強張らせ、怯えたような表情を見せる奏。



「奏?」



キスしようとしたんだけど……



「どうした?」



手を伸ばして奏の頬に再び触れようとしたら。



「さっ、触らないでっ!」


「え?」



益々怯えたような顔をして、目には涙まで貯めている。



「大丈夫?気分悪い?」


「あっ、あなた、誰ですか?」


「奏……、何言ってる?」


「近寄らないでっ!」



…………奏?……



一体どうしたんだ?



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