秘密





怯えた顔でシーツを引いて顔を半分隠し、微かに震えている奏。


俺は訳がわからず、奏に伸ばしかけた手を止めたままの体勢で、奏の顔を見つめていた。



−−コンコン…



「失礼しまーす…」



遠慮がちに声がして引戸が開かれるとそこに居たのは。



「……拓ちゃ」


「たっ、拓也君っ!助けてっ」


「えっ!?どうしたのっ?!」



慌ててベッドに駆け寄る拓也。



駆け寄った拓也のTシャツを奏はギュッと掴んで、俺から隠れるように更にシーツを引き上げた。



「え?何?何があったの?」


「この人が…、私に…」


「この人って……、佐野、お前かなちゃんになんかしたのか?」


「……俺は、別に…」



奏……?
……俺の事、この人って……



俺の前で奏を遮っていた拓也を退かして、シーツを剥がして奏の顔を覗き込む。



「奏?俺だよ…、わからないのか?」


「っ…、知りませんっ、あなた一体誰ですか?」


「知らない?俺の事知らないって……」



両手で奏の頬を挟んで顔を近付ける。



「やっ……、痛っ」


「おいっ佐野っ!かなちゃん怪我してるんだぞっ!」



拓也に腕を掴まれて、俺は慌てて手を離した。



「ごめん、奏…」



怯えた瞳で俺を見ている奏に拓也が。



「かなちゃん?大丈夫?痛い?医師呼ぼうか?」


「う…、ううん。大丈夫。ありがとう、拓也君……」


「………かなちゃん、俺の事はわかるんだよね?」


「え?……、うん。拓也君でしょ?そんな事当たり前じゃない、どうしてそんな事聞くの…?」


「じゃあ、こいつは?」



俺を指差しそう言う拓也。



「………知らない…、拓也君の友達なの?」



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