秘密




病室から出て通路を少し歩くと談話室があり、俺と拓也はそこの壁際のソファーに腰を下ろした。



「拓ちゃん、奏…、言ってる事が変だよな?」


「うん……あのさ、佐野」


「ん?」



拓也は前屈みになり両膝に肘をついて、両手を組み合わせた。



「かなちゃん、もしかして…、記憶が…」



とんでも無いことを言い出す拓也に俺は思わず苦笑い。



「は?何言ってんの、拓ちゃ…」


「ちょっと聞けよ、俺とかなちゃんの話し聞いてただろ?かなちゃん、お前と同じクラスだと思ってないようだったし、しかも進級してないって言ってただろ?」


「それが……、何?」



なるべく考えないようにしていた最悪の言葉を拓也に告げらてしまいそうで、俺は次第に顔が強張っていくのがわかった。



「もしかして、かなちゃん、お前の事……」


「そんな事!ある訳無いだろっ!」



俺は立ち上がり、拓也を上から睨み付けた。



するとざわついていた談話室は一瞬静まり返り、俺達に周りからの視線が注がれる。



「佐野……」



俺を見上げる拓也は、俺が怒鳴ったにも関わらず、その表情は怒っていると言うより、哀れんでいるようで。



「そんな事…、あってたまるか……」



俺は力が抜けたように、再びソファーにストンと座り込んだ。



「俺だって、信じられないけど……、でも、それしか考えられないだろ?」



それしか考えられない……



俺を見る奏のあの怯えたような表情。



拓也の言ってる事は、さっきの奏の反応を見たら誰だってそう思うに違いない。



記憶……、喪失?



………奏。



今までの俺との事……



忘れてしまったって言うのか?






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