秘密
知らないうちに二年生になっていた。
知らないうちにアルバイトをしていた。
知らないうちにお父さんに恋人が出来ていた。
知らないうちにあの佐野君と仲良くなっていた。
この3ヶ月間。
ただ流ているだけだった私の時間は、今までと違ってとても新鮮なものばかりで、どちらかと言えば人見知りな私が、どうしてアルバイトなんか始めたのか、全く見当がつかなくて。
この3ヶ月の間でどうしても欲しいものが出来てしまったのかな?
それとも地味で内気な性格をどうにかしたかったとか?
なんて、色々と考えたりしてみたけど、消えてしまった3ヶ月間の空白で私が何を思っていたのかなんて、私本人にしかわからない訳だし。
その本人が忘れてしまった事を、私がどうする事も出来ない。
無くなってしまったのはたったの3ヶ月分。
別にそれで日常生活に支障を来す訳ではないし、遅れてしまった勉強は、この何もやることが出来ない入院生活で、夏休みのうちに取り戻せるから、別に今の所はそこまで困っている事はない。
困っている事はないんだけど……
−−コンコン……
「あ。おにーちゃんかな?」
まりあちゃんがそう言うと引き戸が開かれて、毎日大体夕方位にやって来るのは。
「佐野君、こんにちは」
「おにーちゃん、こんにちはー」
「奏、何か思い出した?」
佐野君は毎回やって来ると直ぐに、まりあちゃんと同じ事を聞く。
同じクラスで席も隣だと言う佐野君。
佐野君と、この3ヶ月の間でどうして仲良くなったのか、それがいちばんの不思議だった。