秘密
私とまりあちゃんの担当の看護師さんは、前田さんと言って、若くてとても可愛い女の人。
「あら、トランプやってたの?」
ワゴンを押しながら笑顔を見せて、ベッドまでやって来た前田さん。
「うん。看護師さんも一緒にやろうよ!」
「やりたいんだけど、今仕事中だから、ごめんね?」
「えー?やろうよー」
頬を膨らませて訴えるまりあちゃんの頭を撫でながら、前田さんはもう一度、ごめんねとまりあちゃんに謝って、まりあちゃんの耳に体温計をあてる。
「……36.5℃…っと」
それをカルテに書き込み、次は私の番。
「はい次、奥村さんね……、ん?37.5℃……ちょっと熱があるね?大丈夫?」
「奏。熱あるの?」
佐野君の大きな掌が伸びてきて、私の額にそれを持ってくる。
「あ…、ホントだ、熱い…」
額に感じる佐野君の掌は冷たく感じられて、私は自分が発熱している事に気付かされた。
「そう言えば今日はちょっとだけダルかったかも、食欲もあまり無かったし…」
「ダメだろ?寝てなきゃ」
「そうよ?奥村さん。そう言う事は早めに言う事。ここは病院なんだから、病気を治す所なのに、病気になってどうするの?それとあなた。いつまで女の子の顔に触ってるの?」
「あ……、ごめん」
慌てて手を引く佐野君。
佐野君は私によく触れてくる。
友達なら当たり前なのかも知れないけれど、今まで佑樹や拓也君以外の男の子とあまり親しく話した事なんかないから、始めは少し戸惑った。
それとも佐野君が、単に女の子慣れしているだけなのかも知れないんだけれど。
私自身もそうされる事が別段嫌でもなく、記憶を無くす前、それだけ佐野君は私に浸透していたと言う事なんだろうか。