秘密



「まりあちゃん。お姉ちゃんは具合が悪いから、もうトランプはやめて自分のベッドに戻ろうね?」



前田さんがそう言うと、佐野君はまりあちゃんを私のベッドから抱き抱え、まりあちゃんは心配気に私を上から見下ろしながら。



「おねーちゃん、お熱なの?だいじょーぶ?」


「うん。大丈夫だよ、ごめんね?トランプ、また明日もやろうね?」


「うん!」


「奥村さん。一応診察してもらおうね?多分風邪だと思うけど、医師呼んでくるから、休んでてね?」


「はい」



前田さんは体温計とカルテをワゴンに乗せると、病室から出て行き、佐野君はまりあちゃんをベッドまで運んで、まりあちゃんをそこに座らせ、ベッド脇にしゃがみ込んだ。



「じゃ、俺帰るよ」


「えー?もう帰っちゃうの?今来たばっかりなのにー」



佐野君はまりあちゃんの頭をくしゃっと撫でると。



「奏が休めないだろ?また明日も来るよ」



佐野君は立ち上がると、私の方を見て。



「じゃあね。奏」



そう言って私に背を向けた佐野君に私は。



「あの、佐野君。さっき何を言いかけたの?」



佐野君は振り返ると。



「ん?さっき?俺何か言ったっけ?」



私の気のせいだったのかな?



「ううん、私の勘違いだったみたい、気にしないで、いつもお見舞いありがと、またね。佐野君」


「それじゃ」


「気をつけてね。行ってらっしゃい」



何気に出てしまった言葉に自分でも驚いた。



行ってらっしゃいって……
私ったら、変じゃないかな?
佐野君は今から帰る所なのに。



「うん。行ってきます」



佐野君はさほど気にするふうでもなく、そう言うと病室を出ていき、私はそれを見送ると、身体をゆっくりとベッドに横たえた。



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