秘密




何故だか懐かしくも感じるその音色は、私の心にじんわりと浸透していく。



岡崎先生が言ったように、携帯に着けていたのかも知れない。



でも私の携帯は事故にあった時に潰れて壊れてしまったらしくて、それを確かめる事も出来ない。



考え出したらどうしても気になってしまって、色々と思いを巡らせてみるけれど、それはあくまで私の想像で、3ヶ月間もの空白の時間は、私の心の一部が切り取られてしまったような気がして、支障はないと思っておきながら、やっぱりどうしても気になってしまう。



白い鈴……、佐野君?



何故だかわからないけれど、鈴の音色と佐野君が重なってしまった。



何かが掴めそうな気がして、色々と考え込んでしまったら。



ズキン。



「いた……」



こめかみの辺りに痛みが走る。



最近はいつもこれだ……



こんな感じで、何か心に引っ掛かりが出来るんだけど、それ以上考え込んだら頭痛がしてきてしまって、そこから先に進めなくなってしまう。



何か…、物凄く大事な事を忘れている気がするのに……



痛むこめかみを押さえながら、ゆっくりとベッドに横になる。



今は身体を治す事が先だ。



早く治して早く退院したい。



うちの事も気になるし。



お父さん一人で大丈夫かな?
掃除や洗濯や食事の仕度。
ゴミだって分別しなくちゃいけないのに。



そんな事を考えていると、夕食が運ばれてきて、あまり食欲は無かったけれど、頑張って全部平らげた。



薬を飲んで横になり、枕元に置いていたストラップを再び摘まんで揺らしてみる。



チリン……



やっぱり……、よく聞いていた気がする……



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