秘密
「奏……、奏」
「…う……、ん…」
名前を呼ばれて、ゆっくりと目を開けると。
「……お父…、さん?」
「ごめんな、せっかく寝てたのに、起こして…」
いつの間にか眠ってしまっていたみたい。
「…ううん、いいよ、お仕事は?」
「今日は早めに終わらせたから」
「そう、お帰りなさい。お父さん」
「うん。ただいま」
私が身体を起こしかけたら。
「起きなくていいよ、横になってなさい」
シーツを引いて私にお布団をかけ直してくれた。
「風邪、引いたんだって?大丈夫か?」
「うん。へーきだよ、ごめんね?心配かけて」
「心配くらいかけさてくれよ、奏にはいつも無理ばかりさせてたから。こんな時こそお父さんに思いっきり甘えてくれ」
「ふふふ。ありがと、お父さん」
なんか…、こうやってお父さんと話すのは久しぶりな気がする。
「夢でも見てたのか?」
「え?夢?」
「うん。何か寝言言ってたから」
「寝言?…やだ、私寝言なんか言ってた?恥ずかしいな…」
……夢?
見てたような気がするけど……
どんな夢だっけ?
覚えてないな……
「あ。そうだ、今日はこれを持ってきたんだ」
お父さんは思い出したかのように小さな紙袋を見せてくれて。
「はい。新しい携帯」
「わあ。ありがとう。お父さん」
「前の番号のまま使えるよ、でもアドレスは新しく設定しなおしてくれ、お父さんのアドレスは入れてあるから」
お父さんは袋の中の箱から携帯を出し、私に渡してくれた。
「スマートフォン。これ、欲しかったの。ピンクで可愛い…、ホントにありがと」
「実はな、お父さんも…」
お父さんは上着の内ポケットから携帯を出して。
「見てたらお父さんも欲しくなって、つい…」
お父さんは濃いブルーで私はパステルピンク。
「おそろいだね?」
「うん。おそろいだ」
お父さんと目を合わせて二人で笑った。