秘密
「わたしと健吾さんね?確かにお付き合いしてはいるけど、今すぐ結婚したいとか思ってる訳じゃないから……」
「どうしてですか?」
「それは……」
言葉に詰まった成美さんの代わりにお父さんが続ける。
「奏。お父さんはいずれは成美さんと結婚したいと思ってるよ」
「だったら…」
「まぁ、聞きなさい。でもそれは奏が大人になって、幸せになってからでも遅くはない。お父さん達はもう若くはないから、焦って結婚する必要はないんだよ。だからこそ、じっくりと、ゆっくりと奏の成長を見守って、いつか奏がお父さんの元から巣だって行った時、その時にまだお互いを必要としていたら…、結婚はそれからでもいいと思ってる」
「それって……、私の為に結婚を先延ばしにしてるって事?」
「違うのよ?奏ちゃん、決してそんな意味じゃなくて、私が健吾さんにそうお願いしたの」
わからない。
好きならずっと一緒に居たい。
結婚したいと思うのが普通じゃないの?
納得がいかずに沈黙してしまった私の頭を成美さんは撫でてくれながらベッドに腰を下ろした。
「私……、一度失敗してるじゃない?だからね、少し臆病になってるのかも知れない……だけど、奏ちゃんがそう言ってくれてわたし、凄く嬉しい、ありがとう。奏ちゃん」
一度失敗してるからって、そんなにまで臆病になるものなんだろうか?
「……成美さん、お父さんは大丈夫だよ。それにお父さん頼りないから、成美さんがお父さんの奥さんになってくれたら私も安心なんだけどな」
「奏ちゃん……」
「お父さんも、こんなに素敵な女性がお父さんの事好きでいてくのに、そんなに何年も待たせちゃダメだよ、誰かにとられちゃうよ?」
「……奏、ホントにお父さん達が結婚してもいいのか?」
「いいに決まってるじゃない」
「正直に言うと……、奏はお父さんが再婚するの、反対してるんだと思ってた…」
「反対なんかしないよ、むしろ嬉しい位だよ。成美さん。こんなお父さんだけどよろしくお願いします」
お父さんと成美さん。
交互に見ながら私は心からの笑顔を見せた。